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第211回国会 衆議院 総務委員会 第13号


○浮島委員長 次に、輿水恵一君。

 

○輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 

 それでは、早速でございますが、放送法及び電波法の一部を改正する法律案につきまして、質問をさせていただきます。

 

 初めに、ただいまもございましたけれども、中継局の共同利用について質問をさせていただきます。

 

 現在、全ての特定地上基幹放送局、いわゆる地上テレビ局は、番組の制作と併せて、その番組を放送するための本局、親局、中継局等の放送設備の保有と運用並びに維持管理を一貫して行っております。

 

 今日まで、中継局につきましては、NHK及び民間放送事業者において、可能な限り共同建設を行うなど、効率的な整備が進められてきましたけれども、今後は、設備の更新に加え、維持管理等に必要な人材の確保も困難となっていくことが考えられます。

 

 本改正では、地上テレビ放送を行う地上基幹放送局について、諸外国の制度及び設備運用の事例も参考に、更なる効率化を図る観点から、中継局の保有、運用、維持管理を担うハード事業者の設立により、中継局等の共同利用を進めようとするものでございます。

 

 ここで、中継局の共同利用に当たっては、NHKと民間放送局の連携が想定されることから、本改正においては、NHKも、自らの設備だけではなく、子会社であるハード会社の設備を用いることを可能とすることも盛り込まれております。

 

 中継局の共同利用は、放送事業者の中継局の運用、維持管理を効率化していく上で必要なものであると思いますが、他方で、その事業の継続性が確保される必要性もあります。そこで、共同利用会社の設立の際、放送事業の継続性を担保する観点からどのような措置を講ずるのか、お考えをお聞かせください。

 

○小笠原政府参考人 お尋ねの中継局の共同利用会社についてでございますが、これは、電波法の規定に基づきまして、中継局の免許人ということが想定をされます。その免許の審査において、免許期間における事業の継続性を確保する観点から、その申請の際、事業計画や事業別収支見積りを提出いただくということになろうかと思います。

 

 こうした規定に基づきまして、総務省といたしましては、共同事業会社の設立に当たり、その業務継続性が担保されるよう、しっかりと対応してまいります。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 この共同利用会社は、今後、NHKや民放で具体的な検討を行っていくこととなると思います。

 

 そこで、共同利用会社の設立に向けて、NHKとしてどのような視点を持ってどのように取り組んでいくお考えなのか、お聞かせ願えますでしょうか。

 

○根本参考人 お答えいたします。

 

 地域の放送ネットワークインフラにつきましては、総務省の有識者会議で、若者を中心としたテレビ離れや放送の広告市場の縮小などの環境変化により、コスト負担の軽減が課題として指摘されております。

 

 こうした課題を踏まえまして、NHKでは、地域の皆様にNHKと民間放送事業者の放送を将来にわたって届け続けていくために、改正放送法で定められた民間放送事業者への協力努力義務への拠出などに繰越金から六百億円を充てることを、修正した経営計画に盛り込んでおります。

 

 地域の放送ネットワークインフラの維持管理のコストや保守管理の人材確保が課題となる中、民間放送事業者と連携協力して設備維持のコストの抑制に取り組む必要があると考えております。具体策につきましては、次期中期経営計画の期間内に検討することとしております。

 

 総務省の有識者会議で放送事業者の経営の選択肢として提示された、共同利用型モデルの推進やマスター設備の効率化、それに、小規模中継局などのブロードバンドなどによる代替も踏まえて、今後、民間放送事業者と意見交換をしながら、経済合理性にも配慮し、持続可能な仕組みを検討してまいりたいと思っております。

 

○輿水委員 ありがとうございます。

 

 是非、適切な推進をよろしくお願いを申し上げます。

 

 続きまして、マスター設備の技術革新と運用についてお伺いを申し上げます。

 

 各地上テレビ局、放送事業者が作成した番組は、マスター設備から放送のタイミングに合わせて送出し、親局並びに中継局等から放送されていますが、このマスター設備の更新も、放送事業者にとって大きな負担となることが想定されています。

 

 放送におけるマスター設備はテレビ局の心臓部と言われる大変に重要なものでありますが、このマスター設備は、放送が始まった当初に比べると様々な点で技術革新が進んでいると思います。

 

 そこで、特に着目すべき点についてお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

 

○小笠原政府参考人 お尋ねのマスター設備に関してでございますが、近年のICTの動向として注目しておりますのは、柔軟な機能拡張あるいは効率的なリソース共有を実現するクラウドが各分野で積極的に活用されていることでございます。

 

 放送分野においても、クラウド化によりまして、番組制作から送出までクラウド上で一貫して行うことによる業務フローの短縮、簡略化、あるいは設備の設置場所に依存しない運用体制の構築、自社設備から外部リソース利用への転換による設備投資の負担軽減などの業務効率化や利便性向上、コスト削減等の実現が期待されており、御指摘のマスター設備につきましても、クラウドを活用したシステムの開発が進められるものというふうに考えております。

 

 総務省としても、その技術動向を注視するとともに、必要な環境整備に取り組んでまいります。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 ただいま御説明いただきましたとおり、今後はマスター設備のクラウド化が進められることと思いますけれども、委託によるマスター設備の運用であっても、放送事業者には番組の送出を適切に実行する責任があると思います。

 

 そこで、放送事故等の発生防止のために、委託先のマスター設備の維持管理や運用面に対して、放送事業者としては具体的にどのような関与が考えられるのか、総務省の見解をお聞かせください。

 

○小笠原政府参考人 御指摘の点、放送事業者がクラウド等の外部事業者が提供する設備、サービスを利用する場合でございますが、この場合でも、放送事業者の責任において安定的な放送を確保する仕組みが重要であるというふうに考えております。

 

 このような観点から、本改正案では、放送事業者に対しまして、外部事業者を含めた業務管理体制の維持義務を課しまして、その履行を担保する制度を新たに設けることとしております。

 

 具体的には、放送事業者に対し、外部事業者も含めて、非常時や緊急時であっても業務を確実に実施することができるよう、適切な体制の維持を求めるものでございます。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 まさに、非常時、緊急時にも適切な取組、管理ができるようによろしくお願いを申し上げます。

 

 近年、テレビ放送の広告収入というのは低下傾向にあり、特にローカル局の経営が厳しさを増していると伺っております。

 

 一方で、ローカル局の、地域の魅力を積極的に取材し発信する地域情報番組は、地域コミュニティーを維持向上させる意味からも非常に重要であると思います。

 

 さらに、近年、台風、集中豪雨等の大規模な災害により大きな被害が発生しており、災害時においても、放送により必要な情報をきめ細かく伝えるなど、ローカル局の果たす役割は大きいと思います。

 

 今回の改正、ローカル局においても、中継局またマスター設備の共有、また番組の同一化など、適切な効率化を進める中で、事業の継続を期待をしたいと思います。

 

 次に、マスター設備のクラウド化に当たっては、サイバーセキュリティー対策等、安全性また信頼性の確保が重要と思いますけれども、その環境整備をどのように進めていくのか、総務省のお考えをお聞かせください。

 

○小笠原政府参考人 御指摘のクラウド等による柔軟な機能拡張、あるいは効率的なリソース共有を実現する技術が各分野で活用されておりまして、放送分野におきましても、利便性向上やコスト低減の観点から、マスター設備のクラウド化が進むものと想定しております。

 

 現在、マスター設備はインターネット等外部ネットワークから隔離されておりますが、クラウド化により外部ネットワークと接続され、設置場所や維持管理等にも変化が生じることから、これらに関する安全、信頼性対策について検討する必要があるというふうに考えております。

 

 このような状況を踏まえまして、昨年十二月から、情報通信審議会におきまして、マスター設備のIP化、クラウド化等に伴い、新たに措置すべき安全、信頼性対策等の技術的条件を審議いただいているところでございます。

 

 また、先ほど御答弁いたしましたが、本改正法案において、放送事業者が外部事業者を利用した場合であっても、安定的な放送を確保する観点から、外部事業者との間を含めた業務管理体制の維持義務を新たに設けることとしているところでございます。

 

 総務省といたしましては、これらの取組を通じまして、放送事業者が経営の選択肢としてマスター設備のクラウド化を選択した場合に、安心、安全かつ円滑に導入できるよう、技術及び運用の両面から、必要な環境整備に取り組んでまいります。

 

○輿水委員 どうもありがとうございます。

 

 まさに、放送事業者の選択肢として、経営を今後しっかり安定させていく意味での、先ほどのいわゆる中継局の共同利用、あるいはマスター設備の共有化とか、さらに、今法案にあります番組の同一化等、様々な選択肢の中で、しかし、ローカル局としての役割をしっかりと果たせるような環境の整備をしっかり進めていただければと思います。

 

 また、マスター設備のクラウド化ということになりますと、まさに、インターネットというか、そういった形での接続環境も生まれる中で、ただいまのセキュリティー対策ということもしっかりと進めていただければと思います。

 

 本日は、放送の効率化等について議論してまいりましたが、放送と同じく、国を支える情報通信インフラについての強靱化もまさに必要だと思っております。放送と情報通信は共に国民への情報を迅速かつ的確に伝達するものであり、大変に重要なインフラであると思います。その整備や維持管理については、今後も総務省の方で総合的に判断をしながら適切に進めていただければと思います。

 

 若干時間が余っておりますけれども、以上で私からの質問とさせていただきます。

 

 本日は、大変にありがとうございました。