○橋本委員長 次に、輿水恵一君。
○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。
参考人の先生の皆様から貴重なお話をいただきまして、大変にありがとうございます。
まさに、長島先生からは医療DXの必要性ということでお話をいただき、また、冨田先生からも、マイナンバーの活用による、医療を始め様々な国民の利便性の向上、そして、森信先生からはデジタルセーフティーネット、そういう言葉でいろいろ説明をいただきました。また、太田先生からは、デジタル化における行政の効率化やその改善と同時に、プライバシーの保護だとかセキュリティーの大切さということでお話をいただきました。
まさに、マイナンバーの利用範囲を拡大したり、マイナンバーカードの機能を更に高めていくということによっていろいろな形での可能性が見えてくる中で、やはり、キーワードとして、そこまでいったら先ほどのデータ連携も進むし、いろいろな情報の機能も深まってくるとしたら、どこまでプッシュ型のサービスというか、とにかく申請しなければとか、どんどん行かなければではなくて、例えば、医療でも、プッシュ型で、こういうところを気をつけてくださいねとか、また、先ほどの給付もそうかもしれませんし、いろいろな情報とかいろいろなサービスがプッシュ型で来るということは非常にありがたいことである。
一方で、プッシュ型を実現しようとすると、それなりに、どういう方にこのサービスが必要なのかという部分では、情報をしっかりと掌握をした上で、必要な方と必要でない方をある程度分けるという形でやらなければならないということで、プッシュ型サービス、私は、もう大変便利でいいなと思う一方、その導入についてはもう大変難しいところがあるかなと。
口座の情報もなければプッシュ型はできないですし、また、医療情報にしても、きちっとした医療情報が把握されていないと何をどうしたらいいか分からないなど、あるいは、所得にしても、家族の状況だとかもないとできない場合もあるということで、こういった課題について、太田参考人、森信参考人、冨田参考人、長島参考人の順で聞かせていただきたいと思うんですけれども、まさに今後データ連携が進んで様々な機能が高まってくる中で、プッシュ型サービスというものを導入する際の課題と留意点等につきまして御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○太田参考人 お答えします。
幾つかの観点があると思うんですけれども、まず三つ、ちょっと申し上げたいと思います。
一つは、やはり行政側に、DX、DXというふうに言いますけれども、いわゆるXは何かというと、仕事の仕方を変えるということがX、トランスフォーメーションになりますけれども、なかなか動機が弱い部分があるというふうに思います。
例えば、例を挙げますと、実際実現しましたが、児童手当の資格確認ですね。これは行政が情報を持っているわけですから、横に連携すれば。ただ、縦に見ると、申請してもらわないと受けられませんという話になるんですが。これを変えていくのが、やはり行政が仕事の仕方を変えて横に連携をすれば、資格確認なんかしてもらわなくてもこっちで分かりますよというようなことなんですが。しかも、それは検討会で提言されたのにもかかわらず放置、私はこれは放置だと思いますけれども、放置されていた。
こういうのを、DXのXで仕事の仕方を変えようということをちゃんと行政がやっていく。もう自分の仕事である、従前の、法律にのっとって毎年仕事をしていったらいいということではなくてXをやるんだということが、やはり、政府もそうですし、自治体の方もXをやるのだということを進めていくのが一つだというふうに思います。
二つ目は、やはり、プッシュ型のためには、まさにおっしゃるように、国民のデータを行政が使うということになりますので、信頼関係ということが大事になってきます。
ただ、国際比較をしますと、これはデータでもうずっと出ておりますけれども、国民の政府に対する信頼というのは、欧米あるいは中国に比べても、日本の場合は残念ながら低い。これはもうデータで出ております。これに対して、一つ希望は、実は自治体に対する国民の信頼は高いんですね。これは日本の特徴です。
したがって、さっき申し上げたように、やはり、マイナンバーカードを、あるいは行政データを使って、プッシュ型のサービス、いいものがありますよということを具体化していくときに、自治体が先導する、実績をつくっていくというのが極めて大事で、そこに信頼関係があって、その基盤はマイナポータルという形で国がつくっているということであれば円滑に進むと思うんですが、いきなり、国が全部つくりました、自治体は使ってください、その先に住民がいるという順番でこれまでやっていたので、何か信用できないというような展開になっていましたので、自治体起点でプッシュ型を進めていくというのが大事だというふうに思います。
最後に、どうしてもやはりデータ流出ゼロということはあり得ませんので、流出するときの対策について、しっかりとBCPですとかルールを作っていくというようなところ、データが流出したときにどう対応するんだということをちゃんと各政府の府省ですとかあるいは自治体が訓練をしていくというのが三点目としては非常に大事だというふうに思います。
以上です。
○森信参考人 お答え申し上げます。
プッシュ型というのは物すごく概念が広くて、単にお知らせというだけから、もう何もやらなくても給付が届くという、広い概念なんですね。
私、一つここで申し上げたいのは、私は税務の専門なものですから、プラットフォーマー等々からマイナポータルに情報が入ってくる、つまりe―Taxというシステムについてちょっとお話を申し上げたいんですね。
これは、実は記入済申告制度というふうにヨーロッパでは呼ばれていまして、要するに、国税当局は、番号をつけて、私のいろいろな情報を持っているわけですね。例えば、単に給与所得だけじゃなくて、どこで講演して、どこで幾ら講演料をもらっているかというのは全部一応持っているわけなんです。そういう持っている情報は、申告のときに国税当局から納税者にまず返してくださいよと。返すというのがこれはヨーロッパの原則になっているんですね。
したがって、ヨーロッパでは、申告の一か月ぐらい前でしょうか、私に関して国税当局が持っている情報が、ばっと、私のポータル、あちらではポータルじゃないと思いますが、私のところにメールで返ってくるんですね。それをチェックして、記入漏れがないかどうか、それから、事業所得なんかは経費がやはり、経費は国税当局に分かりませんので、自分で計算して、記入して、そして申告をするというふうなことで、要するに、国が持っている、あるいはどこかが持っている情報は申告のときに全部私が入手できるようにするというふうな制度が、これから日本でもやるべきだと思うんですけれども。
それについていろいろ進んできているのがAPI連携で、去年からですかね、例えばふるさと納税のときに、必要な控除証明書が、さとふるとかそういったプラットフォーマーから私のところに、申告に当たってデータで連携されて取れるようになっているわけですね。
それから、もう数年前から、いわゆる年間取引報告書という、証券会社で取引したいろいろな配当とか株式譲渡益の情報も、データで私のところに来るように、取れるようになっています。それが自動的に申告につなげられるようになってきて、そこの部分がだんだん進んできているんですね。
それをもっと進めていく。例えば、先ほどちょっと申しましたが、私がギグワーカーだった場合には、私が幾ら、いろいろな店でこれだけ、ウーバーイーツの配達料をもらったかどうかというのが、分かるのはプラットフォーマーですから、プラットフォーマーから私にマイナポータル連携で、API連携で情報として入ってくれば、それを私は申告につなげる、すごく簡便なことができると思うんですね。
そういった意味で、プッシュ型といっても物すごく概念が広くあるので、個別的にやはりピンポイントして制度を進めていくことが必要ではないかというふうに思っております。
○冨田参考人 御質問いただきましてありがとうございます。
私も、大きくは二点あるのではないかというふうに考えてございます。
プッシュ型に限らず、マイナンバー制を使って様々な情報を収集するということは大変多くの個人情報が集積されることになりますので、特に個人情報の管理体制を強化することと安全性を担保すること、これがまず大変重要だというふうに思ってございます。
大きく二点目なんですけれども、何をプッシュしてお知らせをするのかということなんですが、これは、どういう情報を選択するのかということも大変重要ですし、どういうところを通じてプッシュされるのかということも大変重要かというふうに思っております。なかなか、全ての方がデジタルに接しているわけではなくて、私ども、誰一人取り残さないという観点からすれば、やはりこのことが結果としてデジタルデバイドなどを引き起こしてはならないというふうに思いますので、取捨選択と、それからそれに対する国民の理解と環境の整備、こうしたものを複合的に取組をしながら進めていく必要もあるのではないかというふうに考えてございます。
以上でございます。
○長島参考人 保健医療分野におきましてプッシュということで考えられます一つは、行政が行う健康サービス、例えば予防接種とか住民健診等に関する情報を、いつ、あなたが対象になっていますよとお知らせするというのは非常に有効かと思いますので、検討に値するかと思います。
もう一つは、先ほど申しました、これから国民が主役となって健康増進、健康寿命延伸を行うという意味で重要になってくるのがパーソナル・ヘルス・レコード、PHRかと思います。公のものが持っているPHRのデータに関しては、マイナポータルを使って御本人も閲覧可能ですけれども、民間PHR事業者もAPI連携を使って取得可能となっておりますので、この民間PHR事業者が、それを使って、さらに、それだけではなくて、スマートウォッチ、スマートフォンなどを利用した毎日の健康情報も取得して、それを併せて一種のリコメンド、アドバイス機能というのを持っていくということも可能かと思います。
ただ、そのときに医学的な安全性、有効性が非常に重要ですので、そこは例えばかかりつけ医等医療の専門職としっかり連携していただいて、そのような形でしっかりとお知らせする、参加していただくということも重要かと思っております。
以上です。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
まさに、まずそういった信頼がなければなかなか物事がうまく進まないことと同時に、プッシュ型と広く言ってしまうと見えないんですけれども、具体的な、ピンポイントで、このデータ、どんなデータをどんなことに、どういうふうに使うのかということをよく整理をしながら、丁寧に進めていくことがまた必要なのかなというふうには理解をさせていただきました。
そんな中で、太田参考人と冨田参考人にちょっと聞かせていただければと思うんですけれども、まさに、どんな情報を何に使っているかという、見える化ということが非常に大事になってくることと、そのことを自動的に処理して初めて行政の効率化というのが進む中で、最近ちょっとチャットGPTとかが話題になっているんですけれども、AIの活用とか、そこにどういう形で、安全に安定して、そういったものを活用しながら信頼性をかち取って、かつ効率的なそういったサービスにつなげればいいのかなという、その辺の御示唆をいただければと思います。
○太田参考人 チャットGPT等、生成的AIというのがもう非常に話題になっておりまして、これは本当にもう一か月単位で状況が変わりますので、今後更にいろいろな、もちろん便利だということと、対して不安ですとか課題というのも、両方見えてくると思うんですけれども、やはり、AIに関しては、データを使うのがAIになるわけですけれども、中立的な、AIによっていろいろな判断がゆがめられていないかと。
例えば、日本でも、余り知られていませんけれども、住宅ローンを貸していいかどうかというのはもう人間が判断していないんですね、多くのメガバンクは。ただ、これを広く公開すると、やはり利用者の方が嫌がると。何だ、人間じゃなくてAIが俺のやつを管理しているのかというふうに言われるので余り言われていないんですけれども、もう既にそういうことが起きている。
ただ、実は、その判断が差別を生んでいないかというようなことが例えばもうアメリカでは問題になっておりまして、それは、例えば人種によって判断の差が出ていないかとかいうことがありまして、そういうことをちゃんとやはり中立的にジャッジする、ウォッチする機関というのがだんだん出ていまして、多分日本でも、データが利用できるというのはどんどん便利になるんですけれども、その利用した結果、何か差別だったりあるいは課題が生まれていないかというのをウォッチするような、恐らく第三者的な組織というのが今後必要になってくると思いますので、行政データも含めて、使われた結果についてのウォッチというのが非常にこれから大事になって、まあ、日本ではまだこれからだというふうに思っております。
以上です。
○冨田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。
AIとそれから我々、働き方をどうするのかということについては、私ども、大変大きな課題だと思っているんですが、なかなか、まだちょっとそこに触れるところまでの具体的な議論に至ってはいないということなんですが、ただ、私どもも一度研究をしたことがございまして、AIがアルゴリズムも含めてどういうふうになっていくのかということに対しては、何点か懸念を持ってございます。
私ども労働組合にも大変毎月多くの労働相談が来ますので、実は、ホームページの入口上にチャットボットを設けていて、簡単な御質問にはAIがお答えするようなシステムを入れているんですけれども、これは、質問を想定をして、あらかじめQをデータの中に用意し、ぶつけるものでありますので、そこのところでできない質問は、要は電話で問い合わせてくださいという形になるんです。
今言われているようなチャットGPTのようなものは、どの情報を提供するのかをAIが判断するということですので、その情報の信頼性がどの程度にあるのかですとか、アルゴリズムに対する様々な、先ほどの監視の機能であったりだとかルールがない中ですと、やはりプライバシーの問題や人権や差別などを引き起こしてしまうのではないかという懸念がありますので、ここは慎重に議論をしていく必要があるのではないかというふうに考えてございます。
ありがとうございます。
○輿水委員 どうもありがとうございます。
まさに情報の信頼性とか、あとは、どんなアルゴリズムでどういったことがなされるのかということを慎重に確認をしながら、適切な、そういったサービスが今後どのように進められるかについては慎重に議論をしていくことなんだろう、そのように思います。ありがとうございます。
そこで、最後に太田参考人に聞かせていただきます。
これからの社会のデジタル化、そして、より便利で、またいろいろな形の情報を利活用する社会において、スマホというのが結構大事な、そのうち誰もが持って、その中の情報から取り出されたり、そこに情報が入ったりという部分が非常に重要になってくると思うんですけれども、今後の社会におけるスマホの役割とか価値とか、一方で、スマホというふうに概念があるんですけれども、スマホもいろいろなアプリでいろいろな形でカスタマイズできる。やはり、利用者の方に応じた、そういった適切なカスタマイズがスマホでされると、より便利な、よりいいデジタル社会になるのかなというふうにも感じるんですけれども、その辺の、スマホの利活用の未来と社会についてちょっと御示唆をいただければと思います。
○太田参考人 お答えします。
ちょっと一般的なところも含めてなんですけれども、デジタル社会において、例えば、個人の権利ですとかプライバシーをどう守るかとか、あるいは、ソーシャルメディアでは非常に分断を生んでしまうですとか非常に激しい攻撃が行われるですとか、様々な問題がある中で、これは国連中心に、個人の資質として、割と勉強ができるというIQ、あるいは社会でうまくやっていけるEQというのが定義されているわけなんですけれども、DQというのが十年ぐらい前から定義をされております。これは、デジタルにおける生きていくための資質という、権利を尊重するですとかプライバシーを守るですとか、いろいろなことが含まれているわけなんです。
このDQというのがまだ日本では余り本格的には導入をされていないというところがありまして、これは教育をつかさどる文部科学省だけではなくて職場も含めての話になりますので、大人も含めて、こうしたDQとは何なのか、どういうふうに学んでいくのかというところをやっていかないと、やはり、道具であるデジタルあるいはスマートフォンに振り回されて、一番使っているのは例えばソーシャルメディアあるいはゲームですけれども、中毒という症状も青少年を含めて出てきていますので、あるいは、判断がゆがめられるですとか、こういうことに対する備えというのを、デジタル社会を促進していくというのと同じ多分スピードでやっていかないと、かなり厳しいことも予想されるということで、DQというのを政府としてもきちっと議論いただければというふうに思っております。
以上です。
○輿水委員 どうもありがとうございます。
DQにつきましてもしっかりと議論を進めさせていただきたいと思います。
今日は、貴重なお話、ありがとうございました。
以上で終わります。ありがとうございます。