○赤羽委員長 次に、輿水恵一さん。
○輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。
本日は、質問の機会を与えていただきましたことに、心より感謝を申し上げます。
それでは、早速でございますが、質問に入らせていただきます。
初めに、新しいNHKらしさの追求について伺います。
公共放送であるNHKの使命と役割は、国民から徴収した受信料を主な財源として、放送の自主自律を貫き、視聴者の判断のよりどころとなる正確な報道や、豊かで多彩なコンテンツを全国で視聴できるようにすることで、健全な民主主義の発展や公共の福祉に寄与することと認識をしております。
そして、今、NHKは、視聴者である国民の皆様の信頼に応えるとともに、より効率的な運営体制を再構築し、正確かつ公平で公正な、そういった放送・サービス、そして、いつでもどこでも最適な媒体を通じて発信し続ける、新しいNHKらしさの追求に取り組んでいると伺っております。
そこで、まず前田会長に伺いますが、新しいNHKらしさの追求とは、具体的にどのような課題に対して、どのような改革を進めようとしているのか、お伺いを申し上げます。
○前田参考人 お答え申し上げます。
新型コロナウイルスの感染症の世界的な流行、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、相次ぐ大規模災害などによって社会経済の先行きに不透明感が増す一方で、幅広い世代に利用されておりますインターネットには、不確かで曖昧な情報もたくさんございます。
そうした時代環境の中で、既存業務を抜本的に見直して、スリムで強靱な新しいNHKとなり、正確、公平公正で、豊かなコンテンツをいつでもどこでも皆様にお届けし続けることが、今の時代のNHKが果たすべき使命だと考えております。
経営計画で掲げました五つの重点項目のうち「安全・安心を支える」では、地域に密着した災害などの情報を、放送とインターネットを連動させて、これまで以上にきめ細かくお伝えしていく予定であります。また、大規模災害の発生によって渋谷の放送センターが機能停止した場合でも代替できるよう、大阪放送局の機能強化を進めているところであります。
コンテンツの強化では、報道やドラマといったジャンル別に経営資源を管理し、重複する内容の番組を整理、削減することで、質の高いコンテンツに経営資源を集中させる取組を進めております。
この春の番組改定では、新たな番組や従来の番組の放送時間の変更などで、総合テレビとEテレを合わせ約半分近く、四二%の番組を入れ替え、視聴者ニーズに応える番組編成を実施してまいります。
このほか、訪問によらない営業では、営業経費の大幅な削減に取り組み、来年度、初めて営業経費率を一割以下に抑えることにしております。
人事制度改革では、公募により若手管理職を選抜し、四十代前半の地域放送局も誕生させております。
経営計画二年目の来年度は、新しいNHKらしさ、スリムで強靱なNHKの実現に向けた取組を更に強化し、視聴者・国民の皆様の信頼と期待に応えてまいりたいと思います。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
五つの重点項目について御説明をいただきましたが、これを一つ一つ着実に進めていただければと思います。
それでは、ちょっと具体的な中身についてお伺いいたしますが、まず、命と暮らしを守る報道の強化について伺います。
ただいまも会長からもございましたけれども、激甚化、また頻発する自然災害や、想定外の事案による社会の様々な課題等に対しまして、専門的な知識や経験を生かした取材に基づく信頼できる情報を迅速に一人一人に届け、適切な判断と行動を促すこともNHKの大きな役割であると思います。
そこで、国民の命と暮らしを守る報道を強化するために、令和四年度はどのような取組を進めようとしているのか、お聞かせください。
○正籬参考人 お答えいたします。
大規模災害や新型コロナウイルスなどの様々な脅威から一人一人の命と暮らしを守るために、安全、安心につながる情報を、テレビ、ラジオ、それからインターネットで、それぞれの特性を生かして的確に発信していくということはNHKの使命だと考えております。
今月十六日に宮城県と福島県で震度六強の揺れを観測した地震がありましたけれども、避難の呼びかけや被害の状況に加えて、インターネットで放送の同時提供を行ったほか、停電ですとか交通への影響ですとか自治体による避難に関する情報なども、インターネット等のサイトを通じてきめ細かく伝えました。
令和四年度も、多様な伝送路で、それぞれの特性を生かして、正確な情報を伝えていきたいと考えております。
また、首都直下地震などの発生時でも放送・サービスを確実にお届けするために、東京の放送センターの代替として、大阪放送局の機能強化に取り組んでおります。大阪放送局では、ニュースのデジタル発信を専門的に担うグループの本格運用を始めておりまして、令和四年度にはこの取組を促進いたします。
人材育成についてですけれども、新採用者、それからいろいろな各段階での研修がありますが、防災・減災に関する研修を行っているほか、去年末に国が新たに千島海溝、日本海溝の巨大地震の被害想定をまとめたことも踏まえまして、本部と各地の放送局が連携して、大規模災害を想定した訓練を、二月二十八日、先月に実施いたしました。こうした取組を強化して、専門人材の育成を進めていきたいと考えております。
○輿水委員 どうもありがとうございます。
命と暮らしを守る報道ということで、今御説明いただきました。是非進めていただきたいと思っております。
ここで一つ、聴覚障害者や、また、訪日また在留外国人に対しても、災害の情報や生活に必要な情報を適切に届けることも重要と考えるところでございますが、この点についての取組の現状と、今後についてもお聞かせ願えますでしょうか。
○正籬参考人 お答えいたします。
緊急災害時における障害のある方や訪日、在留の外国人への情報提供は重要な課題だと受け止めておりまして、強化を進めております。
今月十六日の宮城県と福島県での震度六強の揺れを観測した地震では、テレビの特設ニュースの開始と同時に字幕放送を実施いたしました。また、津波注意報が出されていましたので、海岸や川の河口から離れるよう呼びかける手話の動画をワイプでつけまして、初めて試験的に使用しました。今検証を進めております。
また、訪日や在留の外国人向けには、NHKワールドJAPANの英語の音声を総合テレビの副音声で流すとともに、総合テレビの画面上ではNHKワールドJAPANのQRコードを掲載しまして、英語ニュースのウェブサイトに誘導いたしました。
さらに、国際放送のインターネットライブストリーミングでは、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受けまして、AIの多言語字幕付与サービスにウクライナ語を追加するとともに、ニュースのサイトにもウクライナ語のページを加えました。日本政府の対応、支援の動き、在日ウクライナ人の活動など、様々な情報を発信しております。
ユニバーサルサービスでも一人一人の命と暮らしを守る情報を的確に発信していくために、こうした取組を一層強化してまいりたいと考えております。
○輿水委員 どうもありがとうございます。
きめ細かいサービスをこれからもしっかりと進めていただければと思います。
続きまして、構造改革による経費の削減についてお伺いを申し上げます。
先ほど前田会長より、今現在、スリムで強靱なNHKに向けた番組経費の見直しや営業経費の構造改革が進められている、このように伺いました。
そこで、それぞれ具体的にどのようなことが、令和四年度はどこまで進められるのかにつきましてお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。
○松坂参考人 お答えいたします。
四月からの来年度、二〇二二年度は、現在の経営計画の二年目として、新しいNHKらしさの実現に向けて、放送・サービスの強化を図るとともに、二〇二三年度の受信料値下げと衛星波の一波削減に向けて、構造改革による支出の圧縮に取り組みます。
具体的な支出の圧縮としましては、国内放送費が前年度に比べまして百二十一億円の減としております。これは衛星放送関連の経費が大半を占めております。衛星については、報道や国際など必要なコンテンツを維持する一方で、衛星波の削減を視野に、コンテンツを精査して整理し、予算を削減しております。
それから、訪問によらない営業活動の推進により、訪問要員に関わる経費を大幅に削減し、営業経費率は、一九八九年度の公表開始以来一〇%を初めて下回って、九・三%となる見通しです。支払い率は、来年度も今年度と同じ八一%を確保したいと考えております。
このほか、建物や機材などの設備投資、建設費につきましても、必要なものを精査して、来年度は百五億円削減しております。
安全、安心を支え、多様で質の高いコンテンツを合理的なコストでお届けすることに注力し、四月以降は、新たな番組や視聴者ニーズに応える番組編成を実施していきます。
今後も構造改革を進めるとともに、必要なコンテンツには経営資源を投入して、スリムで強靱なNHK、新しいNHKらしさの実現に向けて取組を強化してまいりたいと考えております。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
まさに一つ一つ、今までのやってきたことを見直しながら経費の節減が進められていることがよく分かりました。
そこで、この経費の取組と連動しての国民が負担している受信料の軽減、二〇二三年度に向けてというふうに今お答えいただいたんですけれども、具体的に、どのような視点で、どのように進められるのか、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
○前田参考人 お答え申し上げます。
経営計画の中でもお示ししておりますが、現在進めております一連の改革の成果を、最終的には二〇二三年度に受信料を値下げするという形で還元することをお約束しております。その原資といたしましては、営業改革など構造改革を断行し、更なるコスト圧縮を行うことや、財政安定のための繰越金の取崩しを行うことなどで確保していくことを想定しております。
二〇二三年度は衛星波の削減を行う年でございますので、衛星契約の方の値下げをまず最初に考えたいと思っております。その具体的な内容につきましては、今年の秋に明らかにしたいと思います。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
しっかりと進めていただきたいと思います。
続きまして、NHK放送技術研究所の予算につきまして伺います。
NHK放送技術研究所の技術により、放送や映像の世界も大きく進歩していると私は思っております。この分野における当研究所が果たしてきた役割は多大であり、最近では、8Kの映像技術、これが内視鏡を活用した医療の分野にも大きく貢献していると思います。
そこで、今日までNHK放送技術研究所で主にどのような技術が開発され、社会に実装されてきたのか、また、現在はどのような技術の開発に取り組んでいるのかにつきましてお聞かせ願えますでしょうか。
○児玉参考人 お答えいたします。
NHK放送技術研究所は、各種放送方式の研究開発を進め、二〇〇〇年に衛星デジタル放送、二〇〇三年に地上デジタル放送、二〇一八年に4K・8Kスーパーハイビジョンの実用化に貢献してまいりました。また、音声認識技術による生字幕制作システムの実用化を始め、東京オリンピック・パラリンピックで実施しました、手話の動きのCGを自動生成する手話CG実況などのユニバーサルサービスの研究にも取り組んでおります。
現在は、放送・通信融合サービスとして、放送・通信など伝送路を意識しない新たな受信方式や、AR、VRコンテンツも利用できる放送の高度化、紙のように薄くて軽く、丸めて持ち運べるフレキシブルディスプレーなどの研究開発を進めております。
また、認知科学や材料、デバイス、ホログラムなど、長期的な視点で取り組む基礎研究の分野にも引き続き対応してまいりたいと考えております。
○輿水委員 どうもありがとうございます。
私も、NHKの8Kの映像で、内視鏡で8Kの映像を見ながら手術をする、そういった画像を見せてもらったんですけれども、今までのものは血管がよく見えなかったんですけれども、血管の細かいところまで見られて、より高度で安全な手術もNHKの開発した8Kの技術でできるのかな、このような感想を持たせていただいているところでございます。
そこで、NHK放送技術研究所が開発した技術はこのように社会に大きく貢献していると思いますが、経費の節減の取組、削減の取組は非常に重要であると思いますが、当研究所の研究についてはしっかりと継続をしていただきたいと思っております。
そこで、NHK放送技術研究所の予算の近年の推移と、今後の方針についてお聞かせ願えますでしょうか。
○児玉参考人 お答えいたします。
放送技術研究所を含むNHKの技術関係の調査研究費は、年により多少の増減はございますが、この五年間では、おおむね年間六十億から八十億円程度となっております。
今後も、公共メディアとして、視聴者に新たな価値を提供するための研究に取り組むと同時に、未来のメディア、サービスに目を向けた研究にも積極的に取り組み、基礎から応用まで、必要となる技術の研究開発をバランスよく進めてまいりたいと考えております。
○輿水委員 どうもありがとうございます。
続きまして、インターネットの活用について伺います。
近年、モバイル端末の急速な普及等により、インターネットの利用が急激に拡大をしています。インターネットにより、いつでもどこでも世界中の情報が得られるようになりました。
そこで、NHKのインターネットの活用について、他の放送事業者などの関係者との連携ということで、総務大臣からもこういった意見もあったと思いますが、このような現状も踏まえ、今後の取組についてお聞かせ願えますでしょうか。
○松坂参考人 お答えいたします。
インターネットによる情報発信の重要性は年々増しております。NHKは、インターネット活用業務実施基準の範囲内で、NHKのコンテンツにいつでもどこでも触れられる、触れていただくように取り組んでいるところであります。
主なサービスといたしましては、常時同時配信と見逃し番組配信を行うNHKプラス、それから、「らじる・らじる」によるラジオ番組の配信、そして、NHKニュース・防災アプリなどを通じた安全、安心を守る情報の提供などがあります。また、国際発信を効果的に拡充するため、国際放送のウェブサイトやアプリの強化にも取り組んでいます。
二〇二二年度は、NHKプラスで、総合テレビの番組の提供時間を一日二十四時間に拡充するほか、インターネットに接続したテレビで見逃し番組を御覧いただけるサービスを新たに開始いたします。また、国際発信では、NHKワールドJAPANについて、インターネット配信事業者経由での海外での配信を強化するほか、在外邦人向けの日本語のNHKワールドプレミアムで、ネットでの提供番組の拡大にも取り組みます。
民放との連携につきましては、放送法の努力義務を踏まえて、TVerを通じたNHK番組の配信を現在十程度の番組で行っておりますけれども、民放各社でインターネットによる番組の同時配信が本格化する中、連携、協調を今後どのように進めていくのか、民放各社の御意見や御要望を伺いながら、対応を検討していきたいと考えております。
今後とも、民放との二元体制を堅持しつつ、インターネットの適切かつ効果的な活用に取り組んでまいりたいと考えております。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
以上で終わります。