・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する
・法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)
・労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(井坂信彦君外五名提出、衆法第二二号)
○渡辺委員長 次に、輿水恵一君。
○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。
本日は、参考人の皆様、貴重な御意見を賜り、心より感謝を申し上げます。
私の方から、もう時間もないので端的にいろいろ聞かせていただきたいんですけれども、まず初めに、鎌田参考人に、今回の労働者派遣法の改正の意義についてもう一度確認をさせていただきたいと思います。
そもそもこの派遣法の制定の目的というのが、労働者派遣事業を労働力需給調整システムの一つとして制度化し、労働者の保護と雇用の安定を図るために必要なルールを定める、このように目的が規定をされており、さらに派遣法では、労働者派遣について、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、」と規定されています。つまり、派遣元は、派遣労働者の雇用主としてしっかりとした責任を果たす、そういう内容がそもそものもとになっている、このように感じるわけでございます。
今回のこの改正、まさに派遣元が責任を持って、派遣労働者のためにさまざまなキャリアアップ支援をしたり雇用安定化措置を遂行する、そしてその能力アップを図り、また、個々の力を強めて、より賃金の高い安定した職場への道を開く、そういったものであると思います。この法律を遂行するための、今回、目的に合った、非常に適正な方向性のある改正であるかなと私は感じているんですけれども、その点についての見解をお願い申し上げます。
○鎌田参考人 御質問ありがとうございます。
今議員おっしゃったとおり、今回の改正法は、労働力需給システムの一つとして制度化し、労働者の保護と雇用の安定に資するという方向をより一層強めたものだというふうに思っております。
少し詳しく申しますと、まず、これも私、冒頭に申し上げましたけれども、派遣元の雇用主としての信頼性を、届け出制を廃止するということから、より高める措置をとったということが一つあります。それから、これも議員御指摘のところでありますが、キャリアアップ措置あるいは雇用安定化措置を派遣元に義務づけるということから、派遣元の責任についてはさらに一層強化を図っているということであろうというふうに思っております。
以上です。
○輿水委員 ありがとうございます。
そこで、先ほど来議論になっているのが、キャリアアップあるいは雇用安定の措置が本当に効果的に遂行できるかどうなのか、こういったところが非常に重要になるわけでございます。
この点について鎌田参考人と秋山参考人に伺いたいと思うんですけれども、派遣元には今回、計画的な教育訓練を実施するとかキャリアコンサルティングを実施、また、無期雇用の派遣労働者に対しては、長期的なキャリア形成を視野に入れて、そういった義務が課せられるわけでございます。
また、労働者派遣事業が許可制になったということで、その許可や更新の要件に、派遣労働者へのキャリア形成支援制度を有すること、あるいはキャリア形成支援の具体的なあり方について指針を規定する等、またさらに報告義務だとかそういったものも発生するわけで、一つ一つ派遣元に対してさまざまな取り組みが課せられる。
そういったものが効果的に進んで、本当の意味で派遣労働者のキャリアアップ、あるいは正規社員、直接雇用に結びつくようになるために、こういうことの最も留意するべき点、どんなところにあるのかについてお聞かせ願えますでしょうか。
○鎌田参考人 キャリアアップ等につきまして、効果的に進めるために最も留意すべき点は何かという御質問でございました。
キャリアアップそれからスキルアップともに、やはり派遣労働者がどのような意欲を持ってどういう方向に自分が進んでいくのか、そういった明確なプランと目的意識が大切だというふうに思っております。
それを派遣元が支援するということでございますので、個々具体的にはさまざまなスキル、さまざまなキャリアアップのあり方ということが想定できるわけでありますが、派遣元としては、派遣労働者の職業生活の今後のあり方、考え方、そしてその方向性を十分に酌み取って必要な措置をとっていくということが、最も両者にとって効果的な成果を生み出すポイントではないかというふうに考えております。
以上です。
○秋山参考人 私は、派遣労働者の方が職場になじんでいただくように、派遣先も努力しなきゃいけないと思っております。やはり即戦力として力を発揮していただきたいわけですから、受け入れる職場では、その辺を考慮して、いろいろなことを手助けしながら、派遣労働者の力が発揮できるような環境を整えてやることが大切だと思います。
そしてまた、今回の法律に言っていますように、派遣元もやはり、研修会を開くだとか、そういうコンサルタントをするとかということを徹底していただきたいと思っております。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
先ほど秋山参考人の方から、日本の中小企業は、九九%、雇用の七割を支えている、そういったお話の中で、やはり人材の確保というのが本当に中小企業にとっては大変大きな課題になって、またこれからも課題になりつつあると。
そんな中で、人材だけではなくて企業を取り巻く環境としても、現場のニーズも変化をしたり、あるいは技術が革新をしたり、そしてそれに合った人材をどう速やかに確保しながら企業の事業をしっかりと運営していくのか、そういったことを悩みながら、いろいろな形で進められていることと思います。
そして、先ほども、何人かの専門職の方に来ていただいて、そういったお手伝いもしていただいて、今まで長年事業をやられてきましたが、また新しい分野へのそういった取り組みも適切に進められているということを伺ったんですけれども、まさに先ほどのお話にもあったんですけれども、先ほど廣瀬参考人からも、やはりキャリアアップというのは、派遣元というよりは派遣先で、どうやって派遣先に受け入れられる、また派遣先が必要とされている力を身につけて、そこに一緒になって大きな貢献ができるかどうか。そこに新しい雇用の道も開かれてくるのかな、そういうふうに思うわけでございます。
そういった意味で、秋山参考人に、派遣先として、今回の改正により、どのような形で派遣元と連携をとりながら、この改正を有効に活用しながら企業の新たな繁栄と発展の道を開いていけるのか、また、そんな方向性があるのかどうなのか、その点についてお聞かせ願えますでしょうか。
○秋山参考人 ただいま議員がおっしゃったように、やはり派遣先のニーズを的確に派遣元は捉えていただきたいと思います。
やはり、どういう人材が必要なのか、どういうキャリアがあればいいのか、どういう技能があればいいのかというようなことを派遣元はよく派遣先と話し合って、そこのニーズをちゃんと捉えてほしいですし、そういう方を派遣先に派遣してきて、うまくマッチングさせていただきたいと思います。ミスマッチで仕事がうまくいかないという例も多々ございますので、その辺のところを派遣元にはお願いしたいと思います。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
次に、鎌田参考人にお伺いしたいんですけれども、やはり、こういったキャリアアップ措置が適正に行われているかどうか、そして、頑張った派遣元に対しては適正な評価が行われることも大事なのかなというふうに思うわけでございます。
そのときに、いろいろなキャリアアップ支援の取り組みも大事であるかと思うんですけれども、今、秋山参考人からいただきましたように、企業のニーズ、どんな人材をそこの企業は必要としているのか、それに対して、どういう人をマッチングさせながら将来の直接雇用につなげられるか、そういった視点も持ちながら、ただ単に画一的なプログラムを用意しているだけではなくて、一人一人の個人に合った、また相手企業に合った、そういった臨機応変というか、いろいろな多種多様なキャリアアップの仕方をどう考えるか、そういった点も非常に必要なのかなと。
そういう面では、計画がありました、マル・バツ、そして、何かこういうことをしている、していない、マル・バツというよりも、もうちょっと具体的な中身をしっかり吟味しながら適正に派遣元を評価していくことが、そこで雇用されている派遣労働者のさらなる育成あるいは能力開発にもつながるのかなと思うんですけれども、派遣元のキャリアアップ、そういった取り組みに対する評価のあり方について御見解をいただけますでしょうか。
○鎌田参考人 キャリアアップの支援の評価のあり方という御質問でございました。
なかなか評価というのは難しいことでありますけれども、外部から評価をするということになれば、一つはやはり、派遣労働者がどのような職業能力を獲得したのか、資格ということでもよろしいかと思いますが、そのような具体的な指標を持って見ていく必要もあるかと思います。
あともう一つ、先ほど来私が申しましたように、やはり派遣労働者の意欲との関係でキャリアアップの効果というのは出てくるわけですので、派遣労働者の満足度が評価をする上で非常に大切だというふうに考えております。
では、こういったものをどのように調査していくのかということが一つの課題ということでございますけれども、一つは、アンケートのようなものも重要なツールではないかというふうに思っております。
以上です。
○輿水委員 どうもありがとうございました。
先ほど廣瀬参考人からも派遣労働者は約百二十万人ということでありましたけれども、ちょっと気になるのが、今回は、派遣労働者のキャリアアップ、また派遣労働者に光を当てた法改正なんですけれども、一方で、派遣労働者は横ばいか減りぎみになっている現状で、それ以外の、パート、アルバイト、契約社員などの非正規、そういった働き方がふえている。そういった中でやはり将来的に大事なのは、そういった皆さんの中で、安定して、さらにキャリアアップを希望する人たちのその道をしっかりと開ける社会になるかどうか、ここがまた重要なのかなと私は思うわけでございます。
実際、ある調査では、派遣社員の方が一般の直接雇用の非正規の方よりも賃金も高いような、そういった実態もあると伺っているわけでございます。
ここで、全員の皆様にこの視点について御意見を、この機会なので伺っておきたいんです。
今後の課題として、日本の将来を考える中に、単純に派遣社員がふえるとか派遣社員が減るとかそういった問題ではなくて、全ての人々の可能性を適切に引き出せるような、そういった社会の仕組み、今回は派遣労働者に光が当たっているんですけれども、一人一人、その希望、また自分の思いをなし遂げられる、そういった社会の仕組みというものが今後は必要ではないかと思うんです。
ここですぐ結論が出るわけではないと思うんですけれども、そこにも光を当てることが、今後、人口が減少し、生産労働力人口が非常に必要になってくる日本の社会にとって大事な要素なのかと思うんですけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。
○鎌田参考人 今後の課題ということで大変大きな御質問がございまして、うまくお答えできるかわからないんですが、私は、二つの面を考えております。
一つは、今議員御指摘のとおり、非正規で働いている方が、不本意で働いている方、あるいは自分の状況に応じてそういう働き方を選んでいる方、いろいろな方がいらっしゃると思いますが、こういう方たちがその力を発揮できるような、その移行が可能になるような社会、そのときそのときの自分の人生の一場面で選んだものが速やかに別な形態に移行できるような労働市場をつくっていくということが、今後の課題として非常に大切だろうというふうに思っています。
そのためには、やはり、自分の持っている職業能力などが労働市場において見えるようにしていく、あるいは、自分の経験が他の企業にも評価できるような仕組みをつくっていくということが非常に大切なことではないかというふうに思っております。
もう一つの点は、派遣についてさまざまな規制が行われると、心配なのは、請負、委託という形で、いわば規制を回避するような形での就業ということになってしまうのではないか。
実はこれは大きな問題でありまして、偽装請負というのはもちろんだめですから、これはしっかりと行政で摘発して、場合によっては、または裁判所におけるさまざまな司法上の救済ということが必要になってくると思いますが、しかし、労働力を外部で利用するということで、請負あるいは委託ということがいわばパラレルに派遣との関係で選択されるということが果たしていいのか。
一方では派遣については規制があって、請負、委託についてはないという状況の中で、ちょっとバランスを崩しているのではないか。そういう危惧がございますので、そうした点は今後の課題として考えていきたいというふうに思います。
以上です。
○秋山参考人 私は、誰でも皆すばらしい能力を持っていると思います。それが不幸にも開花しなかったりとかということもありますので、やはり、小さいときからそういう能力を開かせてあげるような教育ですとか自己啓発とか、いろいろあると思うんですけれども、何かそういうものを磨いてあげるような仕組みができたらいいなとは思います。
これは大変大きなテーマですので、私たちも真剣に取り組んでまいりたいと思っております。
○廣瀬参考人 簡潔にお答えしますが、まず、済みません、キャリアアップについて少しだけ。
キャリアアップを派遣元で行うこと、私、これはフィクションだと思っております。というのは、派遣先で毎日毎日働いております、それを派遣元でどうやってキャリアアップ、スキルアップするんですかということと、派遣先での特殊な技能が必要なんですね。なので、派遣元のキャリア、スキルを磨くのではなくて、派遣先の特殊な技能をそこで磨いて直接雇用、正社員化になればいいと私は思っていますので、フィクションだと言わせていただきます。
それから、質問なんですけれども、私は、まず、非正規労働だけ、ここだけで見ないというふうに思っております。なぜならば、正社員が今やモデルとはなっていない現状は皆さんもおわかりだと思います。過酷な労働とブラック企業がはびこっていることを皆さんもよく御存じだと思っております。
それで、非正規労働の中でも、間接雇用である派遣においては、これはやはり例外であるということ、ここが問題である、そこに焦点を当てていくべきだということを強調しておきたいと思います。
以上です。
○生熊参考人 端的に申し上げたいと思います。
やはり、人間、能力の違いとか特徴の違いとか、それは当然あるわけです。しかし、全ての方々が本当に、働く職場において、一番大事なのは人間として尊重されるということだろうというふうに思うんです。ですから、その違いはあるにしても、本当に差別のない働きやすい職場、そのことが大事なんだろうというふうに思うんです。
そういう面でいえば、大事なことは、今もお話ありましたように、やはり使用者責任というのは一番大きいと思うんです。それは、雇用と使用を分離しない、やはり直接雇用が大原則だろうと思いますし、あるいは、さまざまな違いがあったとしても、待遇については不合理な差別をもたらさない、そういうことが大事だろうというふうに思います。
人生のステージの中でさまざまな働き方が出てくると思うんですが、やはりそれは、そういう大原則を踏まえた上で、全ての方々が本当に、人生としても、あるいは社会に貢献する意味でも働ける、そういうようなことを望みたいなというふうに思っているところです。
○輿水委員 時間でございます。以上で質問を終わらせていただきます。
貴重な御意見、大変にありがとうございました。