右肩上がり、プラス成長の時代は終わった今、日本は小さな政府への転換と同時に、地方の活力の増強を図り、財政の立直しを図ろうと、地方分権、地域主権、更には道州制の導入と様々な議論が展開されています。しかし、掛け声だけは響いていますが、具体的な方針が決まらない現状では、新たな制度や態勢を整えることは難しいように感じます。
ここで、経済圏の再編成と独立を視野に入れた道州制の議論を踏まえ、その視点を活かしながら、都市間の連携を積極的に進め、道州制で目指そうとした地域の活性化を図ることは、大変に有意義なことであると思います。
例えば、現在、新潟港は、10万トン級タンカーが入港する日本海側最大のエネルギー供給基地となっているほか、環日本海・経済圏の国際物流拠点をめざし「国際コンテナ埠頭」を整備しました。この国際コンテナ埠頭は、中国、韓国、ロシアの貿易拠点として地域社会の発展に大きく貢献するものと期待されています。
更に、アジアと北米を結ぶコンテナ船のルートは、太平洋側ルートよりも日本海側ルートの方が、距離が短く、この10年で日本海側ルートは5.7倍も伸びている状況であり、新潟港は対北米にも優位な国際物流拠点港になるものと思われます。
21世紀に入り、日本の世界における経済構造は大きく変化し、日本の貿易総額の割合は、2002年には中国・香港・台湾・シンガポールを含む東アジア圏がアメリカを上回り、2007年には対中国が対アメリカを追い抜きました。また、対ロシア、対モンゴルの日本の貿易額は、2003~2008年の平均伸び率が34.8%と、急成長を見せています。ロシアや東アジア地域の経済拡大に伴い、日本の貿易量は、今やアメリカからユーラシアへと移り、日本海・物流時代が到来していると言えます。
こうした新潟港の可能性を最大限に活かすためには、取扱貨物の流通システムの構築が不可欠となります。ここで、さいたま市は、新潟市と関越自動車道、上越新幹線で結ばれていると同時に、首都圏や東北方面へのアクセスに優れており、この立地を活用し、新潟市との連携による国際貿易事業の展開も夢ではありません。
具体的には、新潟市との連携を深めながら、新潟港や新潟空港で荷揚げされた貨物の集配、通関業務などを行う貿易貨物輸送基地、いわゆるインランドデポや、複数の船会社が参加して共同活用する、効率的なコンテナ輸送システムを備えた物流拠点であるインランドポートを、さいたま市に整備することにより、両市の未来が大きく開かれるものと思います。
このように今こそ、日本の経済の再生のために、そして地方自治体の行財政基盤の再構築のために、道州制の制定を待つのではなく、貿易だけでなく、介護や医療を含めあらゆる事業において、互いの繁栄と発展をもたらす都市間連携を全力で追求すべきと考えます。